日本プロ野球選手会は、昨年9月18、19の両日日本野球史上初のストライキに突入した。近鉄・オリックス両球団の合併問題を契機に、球団代表とそれに反対する古田会長を中心とする選手会は、再三交渉(実質団交)を重ねたが、ギルド的体質の球団側は、選手会の労働組合性を否定した上、合併は経営問題だとして々交渉は難航したようである。選手会の労働組合性については、東京地裁も高裁もこれを認めたので問題はない。

 ところで次に合併問題が労使協議の対象になりうるかである。しかし合併の是非についての最終決定権は、なる程経営側にあるが、選手会側の危惧する合併に伴う各所属選手たちの労働条件、あるいは身分(リストラ)問題等は当然、労働組合としての交渉対象事項である。合併に伴う選手の身分、待遇等の諸条件を明示しないで一方的に合併のみを強行する球団側の態度は、明らかに団体交渉拒否(不誠実団交)に該当しよう。

 3つ目にこれら交渉経過で、交渉に出てくる球団代表は決定権を持たず、常に陰にいるオーナーの意見に左右されており、団交についての正当な当事者適格を有していなかったことが、殊更交渉を渋滞させた要因になったことである。

 最後にストライキの問題である。球団側は勿論、一部世論もプロ野球選手のストには反対の意見が出されていたが、ストは見事に成功した。それは選手会側がストを安易にうたず、ねばりづよく交渉を継続し次善策として一球団の参入を認めるよう要望し、その間、多くの世論の支持を拡大する中でストに突入し、スト中もサイン会等ファンサービスを忘れなかったことである。今回予想外の成果を得られたのは選手会という組織が存在したからであり、何よりもこのストが、労働運動が本来の機能を発揮できていない現状の中で、われわれにストライキの意義を再確認させた功績は大きい。