当事務所の大先輩で、家永教科書裁判などの教育事件や中国人戦後補償裁判など人権擁護にかかわる活動を60年を超える期間一貫して続けられてこられた尾山宏先生が、先生が好きだった西行が歌に詠んだ桜の季節に旅立たれました(享年95歳)。
先生が心血を注いだ旭川学力テスト事件の最高裁大法廷判決(1976・5・21)は、2006年の教育基本法の改正に際し、改悪に歯止めをかける重要な役割を果たすとともに、同判決から48年経過した今日にあっても最も引用されることが多いリーディング判決となっております。
先生は、教科書裁判で、アジア・太平洋戦争における中国、韓国をはじめとするアジア諸国などに対するわが国の加害の事実が政府の検定によって歪められたことを糺すための活動を続けました。さらに、先生は、過去の認識を深め、共通認識にしていくことが、相互の信頼関係を生み、平和構築の基礎になるとの思いで、国連機関をはじめアメリカ、フランス、中国などの国々に出かけ、各国の研究者、市民らと精力的に意見交換を続けられました。
私は、世界中で紛争が多発している今の時期こそ、先生の遺志を受け継いで行こうと思っております。
尾山宏先生、安らかにおやすみください。