弁護士 髙見 智恵子

 1年ほど前から法テラス本部国際室の非常勤として、外国籍の方々からの法律相談を受けています。外国籍の方からの法律相談では、解雇、転職、離婚などに伴い、在留資格の変更や喪失の問題も一緒に考えなければなりません。私が受ける相談も在留資格の問題が多く、外国籍の方々が不安定な立場に置かれていることを実感しています。右のような事情に影響を受けず、日本で長年生活基盤を築いた外国籍の方々が安心して生活していくには、厳格な審査を経て永住権を取得する必要があります。
 今年6月、技能実習制度を廃止し、育成就労制度の創設を盛り込んだ入管法改正案が成立しました。育成就労では、条件を満たした場合、最長5年就労できる「特定技能1号」、その後に在留資格の更新に制限がない「特定技能2号」になることが可能で、要件を満たせば永住権の申請もできるようになります。この改正案により、今後永住者が増加すると見込み、政府は、永住者が入管法に規定する義務を遵守しない場合や、故意に公租公課の支払いをしない場合、また、より軽い刑に処せられた場合でも在留資格の取消を可能とする入管法改正案を閣議決定し、同様に成立しました。
 長年日本で生活していく中で、例えば、病気、事故、解雇などのやむを得ない事情により、公租公課が支払えない状況も生じるかもしれません。日本人と同様、督促、差押え等の対応を行うだけでなく、日本で築いてきた生活基盤を在留資格の取消ということで全面的に奪うことは、最も安定した在留資格である永住権を取得した外国籍の方々の生活をも不安定にするもので、共生社会に逆行するものといえるでしょう。