弁護士 金井 清吉

 福島県は私の生まれ育った場所である。原発開発当時からの心配事が、3.11の大津波で現実となり、その後様子は御存知の通りである。その第一原発の処理水放出が実施され、これに反対していた中国等が、日本産の魚等水産物の輸入禁止措置に踏み切った。

 私もこの処理水放出には反対である。理由は政府・東電が①「関係者の理解なしには如何なる処分も行わない」との合意を踏みにじり、②地下水流入防止策を真剣に検討せず、③放出以外の手段を真剣に検討もせずに当初から「海洋放出」を予定してタンク満杯を待ち④他の補完場所(例えば第二原発)の検討も、他の方策も検討せず⑤更に放出するトリチウムの量は、放出期間も定められないのでその「総量」も分からず、この「膨大な量のトリチウム」が海に流入してこれで日本も近隣国も影響ないとは到底言い切れない環境汚染だからである。中国の懸念も理解できる。

 東電は、漁民の損害は補償するから問題ないというが、人間性を無視した言葉であろう。漁民は、漁業を「生きがい」として永年働いてきた。この生きがいを金銭補償などではカバ-出来得ないことが残念ながら政府も東電も理解できていない。再検討を期待したい。