弁護士 斉藤 豊

 労働基準法第15条は、労働契約の締結に際し賃金、労働時間等の労働条件を明示することを使用者に義務づけています。今年の4月から、厚労省令の改正によりこの明示義務の範囲が拡大されます。

 全ての労働契約(正規、非正規、アルバイト、派遣労働等)に共通するものとして、「就業場所、業務の変更の範囲」が明示事項とされました。テレワーク勤務の有無などは就業場所の明示に入ります。将来の配置転換等によって変わり得る就業場所、業務の内容については、改正により新たに明示事項となりました。

 有期労働契約労働者に対しては2つ改正があります。

 1つは契約の更新回数に関するものです。更新回数の上限の有無、内容が明示事項とされるとともに、当初の契約締結後に更新上限を定める場合や、更新上限を引き下げる場合は、あらかじめその理由を労働者に説明しなければなりません。

 2つめは無期転換権に関するものです。満5年を超えた有期労働契約は労働契約法により無期契約に転換する権利が労働者に認められています。改正ではこの無期転換申込権が発生する契約締結の際に、無期転換後の労働条件を示すことが使用者の義務とされました。無期転換後の労働条件について、使用者は、他の通常の労働者(正社員、無期フルタイム労働者)との均衡を考慮した事項について説明するよう努めなければならないとされたことも重要です。

 どのような条件で働くかを明確にすることは、後の紛争を回避するための大前提です。労使で確認した条件を遵守することが、より適切で人間らしい労働環境の実現へつながることを期待します。