私の父は昨年死亡しました。父が死亡した当時、母は既に他界しており、父の相続人は、兄、姉、私、弟の4名でしたが、父が遺産を私以外の3人の兄姉弟に遺贈し、私には一切残さない旨の遺言を作成していました。
 最近になって、遺留分制度というものがあり、私のような場合でも一定の割合の相続ができるという話を聞きました。
 遺留分制度とはどのようなものなのでしょうか。

 

回答者:弁護士 西岡弘之

 

 遺留分とは、一定の法定相続人に保障される相続財産の一定割合のことです。民法が遺留分制度を定めた趣旨は、被相続人の相続財産処分の自由と、法定相続人の相続財産に対する権利との調和にあります。

 遺留分を有するのは、法定相続人のうち兄弟姉妹を除く者、すなわち、配偶者、子、直系尊属です。全相続人の遺留分は、①直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1、②その他の場合は被相続人の財産の2分の1となり、各相続人の遺留分は、さらにこれらを相続分で分けたものになります。本件の場合、②にあたりますから、相続人全員の遺留分は被相続人(父)の財産の2分の1です。相続人は、あなたと、兄、姉及び弟の4人で、いずれも被相続人の子ですから、あなたの法定相続分は4分の1となるので、あなたの遺留分は8分の1(〔2分の1〕×〔4分の1〕)となります。したがって、原則として、遺産の8分の1について遺留分を主張することができます。

 ただし、遺留分減殺請求権は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年、あるいは、相続開始の時から10年を経過したときに時効消滅しますので、遺留分減殺請求の意思表示はこの期間内になされる必要があります。本件では、被相続人(父)が亡くなられたのが昨年ということですので、時効期間を過ぎていないか確認し、過ぎていない場合も時効期間を経過しないように注意する必要があります。