2007年2月14日、東京都内に在住の70歳以上の生活保護受給者13名(72歳~82歳)が居住地各自治体を被告に、東京地裁に生活保護の老齢加算廃止処分の取消しを求めて裁判を提起しました。現在、同種裁判は、東京を含め8つの地裁で、100人以上の原告により闘われており、全国的な広がりをみせています。
老齢加算制度は、高齢者の特別の需要に対応するものとして1960年に創設されて以来、政府は数度にわたりその必要性を検証し、確認をしてきました。その結果40年以上にわたり老齢加算制度は維持されてきたのです。
ところが、政府は、2003年、老齢加算制度を廃止する方針を決定し、2004年度から段階的に削減し、2006年度で全廃してしまいました。その結果、東京都区部に居住する単身高齢者を例にとると、従前、生活扶助費(家賃、医療費は別)として、月額9万8350円支給されていたものが、2006年4月には7万5770円に減額されてしまいました。約20パーセントもの減額であり、老齢の高齢加算受給者は、「健康で文化的な最低限度の生活」どころか、生きていくこと自体危ぶまれています。
政府は、専門家らによる「検証」の結果、老齢加算を必要とする事情が現在では失われていることが判明したので老齢加算を廃止したと説明しています。しかし、当時の小泉内閣は、その「検証」に先立ち、社会保障費の抑制のために、老齢加算について「見直しが必要である」という「骨太の方針」を決定、発表していました。まさに、「結論先にありき」の「検証」であって、合理的、科学的根拠がないことは明らかです。
今、いわゆるワーキングプア問題に象徴されるように国民の間で深刻な貧困と格差が広がっています。ところが他方、政府は、老齢加算の廃止を手始めに、母子加算の削減等更なる生活保護の切り下げを行おうとしています。この裁判は、老齢加算制度を復活させるだけでなく、憲法二五条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の中身を問い、さらに政府の社会保障政策を抜本的に改めさせることを目指します(当事務所では、渕上のほか、新井・西岡弁護士が担当)。