昨年10月、東京都新宿区に本社を置く健康食品販売会社L&G(2007年11月26日破産手続開始決定)が警視庁などの強制捜査を受けました。このL&Gにはいくつかの投資商品があったようですが、特に「円天」という疑似通貨(電子マネーの一種)を発行していたことがよく知られています。一定金額の出資をすることで、同額の円天の発行を受け、この円天を使って買い物をすると、毎年同額の円天が振り込まれる上、3か月ごとに9%の配当も受けられ、最終的に解約時には出資金が戻ってくる、という説明がされていました。

 「使っても減らないお金」に魅力を感じる方がいるのは不思議ではありません。しかし、出資者が増え続けていかなければ「円天」の価値を維持する基礎がなくなってしまうことは明らかで、単純なネズミ講とあまり変わるところはありません。もちろん、このような仕組みは、同社波和二会長の言とは裏腹に、早晩破綻することは必至でした。現に、5万人とも言われる会員への配当は、昨年2月には停止されていたそうです。

 このような大規模消費者事件は、豊田商事事件、KKC(経済革命倶楽部)事件、オレンジ共済事件、和牛商法事件、ジー・オーグループ事件、ココ山岡事件、大和都市管財事件等々、枚挙に暇がないのですが、なぜ被害者はこうした事件に巻き込まれてしまったのでしょうか。中には儲け話に目が眩んで、安易に投資してしまった方もいるでしょう。しかし、欲をかかなければ被害に遭わないかというとそうでもありません。例えば、こうした事件では家族や親戚、親しい友人などに勧誘されて、断り切れなかった方が必ずいます。人によっては、自分が間違いないと信じて投資したのだから、騙されているなどと思いたくないという心理も働きます。また、今投資すれば儲かる、という話を繰り返し聞かされるうちに、今を逃すと損をする、と思い込んでしまい、冷静さを失ってしまうこともよくあります。むしろ、誰もがこうした罠に落ちる危険があると考えるべきでしょう。

 被害を受ければ、大事にしたつもりの義理やプライドも踏みにじられてしまいます。うまい話に飛び付かないことはもちろん、利害のない第三者に相談して冷静に判断することが大切です。