昨年の5月25日の朝日新聞に「町田の私立学校法人・賃金の削減は無効・地裁支部判決・1470万円支払い命令」という記事が掲載されています。また10月12日の東京新聞には「明泉学園に救済命令・都労委・労組教員の待遇差別で」という記事が掲載されています。どちらも、町田市鶴川にある鶴川高等学校で働く教職員の権利をめぐる、裁判所と労働委員会の判決・命令で、この事件には私と菅沼弁護士がかかわってきました。
鶴川高等学校は町田市にある女子高等学校ですが、教職員の労働条件が都内の私立学校の水準より著しく低く、1993年に組合が結成され、使用者に労働条件の改善を申立てました。しかし使用者は労働条件を改善することなく、却って異議を唱える組合員の賃金を差別をしたり、担任はずしやクラブ顧問はずしを行いました。そこで組合はこうした組合差別が労組法7条に違反する不当労働行為にあたるとして東京都労働委員会に提訴しました。これに対し学園は差別を是正するのではなく、教員全体の定期昇給を取りやめたり、一時金の支給額を極端に切り下げるなどしたので、今度は東京地裁八王子支部に、労働条件の切り下げは違法であるとして、賃金請求の裁判を起こしました。そして前記のとおりの命令と判決を得たのです。
教育にかかわる学校ではまさか、不条理な人事方針がとられるはずはないと思われがちですが、そうではありません。私立学校法人は、宗教法人等と並んで、運営に対する規制制度が著しく欠如しているといえます。
こうした中で、鶴川高等学校の教職員がこうした裁判等をしたのは、自らの権利を守るとともに、生徒・父母の要求に合致したよりよい私学運営を求めるという願いに支えられてのものといえます。そうした意味で、今回の裁判所や労働委員会での勝利命令や判決は、訴えた教職員だけではなく、その学校で学ぶ生徒たちにとっての勝利であったといえます。