6月26日、都内在住の70歳以上の生活保護受給者12名が、生活保護の老齢加算の廃止処分の取消を求めた裁判について、東京地裁は、原告敗訴の判決を言い渡しました。この老齢加算及び母子加算の廃止をめぐっては、全国10地裁において100名を超える原告により裁判が闘われていますが、本判決は全国で最初に言い渡された判決です。
老齢加算は、高齢者に特有の生活需要を満たすために、40年以上にわたり支給され続けてきたものですが、2003年に小泉内閣は老齢加算制度の段階的廃止を決定し、2006年度にはこれを全廃しました。
この老齢加算の廃止は、社会保障費抑制策の一環として行われたもので、高齢保護受給者の生活実態についての実質的な検証をおろそかにしたまま強行されたものでした。その結果、もともとギリギリの生活を送っていた高齢保護受給者は、約20%もの生活扶助費が削減され、「健康で文化的な最低限度の生活」を下回る生活を強いられています。
政府は、この老齢加算廃止を手始めとして、ひとり親等世帯に支給されていた母子加算も2007年度から全廃し、さらには生活扶助基準本体についての切り下げを行おうとしています。格差と貧困が広がる中、セーフティーネットとして生活保護制度が果たす役割の重要性についてはいうまでもありませんが、生活保護制度は最低賃金等他の諸制度、諸施策と連動しており、その基準の切り下げは、生活保護受給者のみならず国民生活全般に影響を及ぼします。
その意味で、本件訴訟は、政府の生活保護基準切り下げ政策の転換を促し、国民の生存権を保障する上で、重要な意義を有するものです。
ところが、本判決は、政府に生活保護基準以下の生活を強いられている国民が存在している事実に対し、この貧困状態を解決するのではなく、この貧困状態に合わせて生活保護基準を切り下げる政府の不当な政策を追認する不当な判決であり、到底容認できません。
原告団及び弁護団は控訴し、引き続き国民の「健康で文化的な最低限の生活を営む権利」を守るため、引き続き奮闘する決意です(事件は渕上のほか、新井、西岡弁護士が担当)。