弁護士、裁判官、検察官のいわゆる法曹三者を志望する人は、司法試験に合格するだけでなく、一定期間(現在では1年間)、「司法修習生」という身分で研修を受ける必要があり、その後、それぞれ弁護士、裁判官、検察官の道に進みます。司法修習生は国家公務員に準じる身分で、これまで給与が支給されていました(給費制)。ところが、今年10月からは給費制を廃止し、貸与制になることが決まっており、これが大きな問題となっています。

 いわゆる受益者負担の考え方によるものであり、むしろ、自分のキャリアを築くための「研修」期間中であるにもかかわらず、税金から給与が支給されていたことの方が不思議だと思われる方も多いかもしれません。

 これまで、法曹になるためには、特にお金はかかりませんでした。ところが、現在では、法曹になるためには原則として法科大学院(ロースクール)を卒業する必要があり、そのために多額の学費がかかります。日弁連が2009年11月に実施したアンケートによると、司法修習生の半数以上が法科大学院の学費のために奨学金などで借金を抱えており、その平均額は約318万円とのことでした。

 法科大学院を卒業して司法試験に受かった後は、司法修習生として一年間研修を受けることになりますが、司法修習生には職務専念義務が課せられておりアルバイト等は禁じられています。そのため、給費制が廃止されると、特に蓄えが無い人は、国から月23.28万円の生活費の貸与を受けることになります。つまり、今後は、法曹になった時点で多くの人が600万円以上の借金を抱えることになるのです。

 これでは、経済的に余裕がない人は法曹を目指すことができないし、法曹になった後もどうしてもお金のことを優先するようになってしまうとして、日弁連などを中心として司法修習生の給費制の継続を求める声が上がっています。単に法曹志望者だけの問題ではなく、社会の在り方にも関わる問題です。みなさまにも、ご理解いただきますようお願い致します。