「イレッサ」とは、イギリスに本拠を置く製薬会社アストラゼネカ社が開発した肺がん治療薬です。このイレッサについては承認前の2000年6月頃からアストラゼネカ社が提供したその効果を称える記事が連日のようにあらゆるメディアを通じて掲載されるなど「副作用の少ない夢の新薬」として大きく宣伝されました。そして、2002年7月、審査期間わずか半年という異例の速さでイレッサは承認され、世界に先駆けて日本で販売されました。
がんと宣告された患者は、さまざまに襲ってくるであろう副作用を覚悟しながら、強い意志と明日への希望を持って治療に挑みます。使用する抗がん剤の利益・不利益など全ての情報を得て納得できる選択をした上で、厳しい治療に挑み、生き続けたいと願っています。
ところが、「副作用の少ない夢の新薬」であるはずのイレッサは発売直後から副作用の間質性肺炎による死亡被害が多発し、販売が開始されて僅か2か月で緊急安全性情報が出される事態となりました。イレッサの臨床試験では有効性が確認されなかったため、アメリカでは新規患者への投与禁止、EUでは承認申請を製薬会社自ら取り下げていますが、日本では現在に至るまでイレッサの販売は継続され、公表されているだけでも2010年3月末までに副作用による間質肺炎で苦しんだ人は2150人に、そのうち死亡者は810人に昇っています。
そして、こんなにも多くの副作用による死亡被害が判明しているのに、現在の医薬品副作用救済制度では抗がん剤副作用被害は対象外とされており、がん患者は何の救済もなく訴えることすらできないのが現状です。
このイレッサの副作用被害を通して、抗がん剤の承認制度の問題、医薬品の承認・販売前の広告・宣伝の問題、抗がん剤の使用による死亡被害に関する副作用被害救済制度の創設等、さまざまな不備や疑問を提起するため起こされたのが「薬害イレッサ訴訟」です。2004年7月に大阪地裁(西日本訴訟)で、同年11月に東京地裁(東日本訴訟)でそれぞれ提訴され、約6年間に及ぶ審理を経て、本年7月には西日本訴訟が、8月には東日本訴訟が結審しました。西日本訴訟は2011年2月に判決日が指定されましたが、東日本訴訟は判決日は指定されていません。
薬害イレッサ問題の解決のためには、抗がん剤による副作用死を製薬メーカーの責任で補償する制度を作ることが不可欠です。薬害イレッサ訴訟の原告、弁護団員、支援者は抗がん剤の副作用死についての救済制度を作らせるための国会請願署名に取り組んでいます。ご理解、ご協力をお願い致します(署名用紙は薬害イレッサ弁護団のホームページよりダウンロードできます)。