弁護士 加藤 文也

 今回の新型コロナのパンデミックに対しては、これまでにない早さでワクチンの開発がなされ、その接種が世界規模でなされていることが、多くの人々に安心感を与えている。このワクチンの1つは、ハンガリー出身のカタリン・カリコ氏がドイツにあるビオンテック社で開発したもので、その開発手法は、今後、新たな感染症に立ち向かうための希望の光となっている。
 「生命の秘密」を解いたとされるワトソンとクリックのDNAの二重らせんモデルの論文が1953年に発表されて以来(ワトソンとクリックがノーベル賞を受賞したのは1962年)、遺伝子にかかわるDNA、RNAの研究の進展は瞠目され、カリコ氏が開発したmRNAワクチンはこの流れのなかに位置付けられる。

 この夏は、新型コロナウイルスと最前線で向き合っている医療従事者やこんな時でも仕事を休めないエッセンシャルワーカーとそれを支える人々に改めて感謝すると共に、1953年にワトソンらの論文を支えるDNA解析の論文を発表しながら早世したため賞をもらえなかったロザリンド・フランクリンのような研究者を偲びつつ過ごしたいと思っている。