「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「私どもの組織委員会…(の女性は)みんなわきまえておられて」などと公職である某組織委員会の会長(当時)が正式会議の場において述べ、女性蔑視・差別発言として国内外から厳しい批判を受けたのは今年2月。この発言のひどさもさることながら、その場にいた者が誰もその発言を制止したり批判したりしなかった、という事実に私は愕然とした。20年前に私が関わった、あるセクシャルハラスメント事件と全く同じ状況だったからだ。その事件は職場の全員が参加したバーベキューでの記念撮影の時のことだったが、上司が部下の女性職員を無理やり自分の膝の上に座らせてポーズをとらせたのに対し、周囲にいた者の誰もその行為を制止することはなかったのである。
同調圧力の強い日本において、権力のある者の言動に批判的な態度をとるのは確かに難しい。が、一人ひとりが「わきまえない」勇気を持たないと、社会は遅々として進まない。