卒業式などで、国旗、国歌を一律に強制する通達とその通達に基づく校長の職務命令の憲法適否が真正面から問われた国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟(予防訴訟)の上告審において、本年2月9日、最高裁第一小法廷は、上記通達及び職務命令を合憲、合法とする上告棄却の判決を言い渡しました。
同事件で、違憲論の立場から反対意見を付した宮川光治裁判官は、その中で次のように述べております。
「こうでなければならない、こうあるべきだという思い込みが、悲惨な事態をもたらすということを、歴史は教えている。国歌を斉唱することは、国を愛することや他国を尊重することには単純には繋がらない。国歌は、一般にそれぞれの国の過去の歴史と深い関わりを有しており、他の国からみるとその評価は様々でもある。また、世界的にみて、入学式や卒業式等の式典において、国歌を斉唱するということが広く行われているとは考え難い。思想の多様性を尊重する精神こそ、民主主義国家の存立の基盤であり、良き国際社会の形成にも貢献するものと考えられる。………自らの真摯な歴史観等に従った不起立行為等は、その行為が式典の円滑な進行を特段妨害することがない以上、少数者の思想の自由に属することとして、許容するという寛容が求められていると思われる。」
前記判決に先立ち本年1月16日、最高裁第一小法廷は、不起立による処分の取消等が問題となった「君が代」訴訟第一次訴訟の第一審原告ら一部勝訴の判決を言い渡しました。それは、都教委が教職員に対して行っている累積加重システム(1回目が戒告、2回目、3回目が減給、4回目以降停職で回を重ねるごとに停職期間が長くなる)について減給以上の処分に付すことが違法であるとし、都教委が行っている処分システムに一定の歯止めをかけることになる判断を示しました。この判決後、都教委は不起立等の教員に対して戒告以上の処分を行っておりません。が、国旗、国歌を教育現場で強制し、教職員を統制する状況は続いており、そのことに歯止めをかけるための訴訟も続けられております。
今年10月の日弁連の人権擁護大会のシンポジウム第一分科会は「どうなる どうする 日本の教育-子どもたちの尊厳と学習権を確保するための教育の在り方を問う」というテーマで行われ、前記問題も取り上げることになっております。今後とも、学校に自由を取り戻すためこの訴訟に対するご支援をお願い致します。